hit-and-run氏の人権感覚


2010年6月24日
今回の問題を法に訴えたいわけではないが、少なくとも、やってすらいないものに「あの程度」という評価を書き込むことで、俺の作品を知らない第三者に、「よほどつまらない作品を書いてるんだな」という印象を与えた可能性はあるわけだ。
「あの」という語を使えば、その指示対象を知っている、という含みを持つからだ。
たとえ一般通念(笑)が権威と認めるところの料理雑誌であっても、取材すらしてない料理店をまずいと書いたら、これは批評とは言えないし、風評被害になりかねない。
俺が言ってるのは基本的にそれだけの話。訴えようが訴えまいが被害は被害なのだ。

さて、ここにちょうど、hit-and-run氏と「風評被害」について論じたログがあります。
http://d.hatena.ne.jp/NaokiTakahashi/20091218/p2#c
長すぎるので余計な部分はトリミングしますが、原文には6月一杯当たれますし、それ以降も必要ならコメント欄だけ保存して公開する用意があります。
トリミングが不当だと思われる場合は不当な部分をご指摘ください。

「風評被害ってご存知です?」という僕のフリに対してhit-and-run氏答えて曰く。

hit-and-run:
存じてます。それに対しては、まずモアスピーチで対抗すべきだと思いますが、法的なアクションをとることもできます。モアスピーチを優先するのは市民の自治を尊重するからです。すぐに法的なアクションをとろうとすれば、市民生活の中にさらなる権力の介入、法的規制を招きかねないからです。

NaokiTakahashi:
いやいやちょっと待って。直接具体的に被害が出る問題ですよ。縛るなら絵空事より先にまずそっちですよ。なんでそんな及び腰なの? 風評に対してされる尊重よりははるかに、フィクションは尊重されていいはずですが。

hit-and-run:
フィクションが名誉を毀損することが可能なんだから、フィクションが風評被害を作り出すことも可能なはずですよね。だからフィクションと風評とは独立の概念で、排斥しあうことはない。で、風評被害かどうかは高橋さんの基準では、個別的具体的に被害があるかどうかを見ていかないといけないはずです。しかし、裁判どうしても長期化するし、それだけ時間をかけた結果、原告の訴えが棄却される場合もある。だから、個人的には話し合いや対抗言論で解決した方がベターだとは思います。これなら原告が被害を法的に証明する必要もないですし。もちろん「法に訴えてはいけない」なんて私は一言も書いてません。法に訴えたい人はそうすればいいし、私はそれを支援したり、批判したり、そもそも無関心だったりするでしょう。

NaokiTakahashi:
>フィクションが風評被害を作り出すことも可能なはずですよね。
フィクションと断ったら、普通は風評にはならんでしょう。架空のお店の風評被害は成立しません。
実在のお店に対してこそ風評に意味がある。例えば、メディア効果論に興味がないと公然と言い放ちながらメディアの効果について表現のプロに対して議論を挑み、言葉の端々に恫喝的な文言を織り交ぜて気づかない鈍感な人がいかにもやりそうなことです。
>しかし、裁判どうしても長期化するし、それだけ時間をかけた結果、原告の訴えが棄却される場合もある。だから、個人的には話し合いや対抗言論で解決した方がベターだとは思います。
ヤクザ丸儲け論ですね。加害側がしたり顔で言う理屈じゃないと思うけどな。貴方は自覚がなさ過ぎる。


こういう感覚でいる人の話なのだ、とすれば、まあ彼の今回の件に対する応答も一貫してはいますね。
実在対象への抗議活動の類には、訴えられるまでOK、簡単に勝てるもんじゃねえぞ、やれるもんならやってみろ、というやり方を肯定しているのに、最初から絵空事と断っているフィクションに対するこの厳しさはなんなのでしょう?
そんな感覚からのある意味自然な帰結であるところの、今回の件を、例えばhokusyu氏は、いろいろ口を出してますがこんな風に評してもいます。

http://h.hatena.ne.jp/hokusyu/9258654694997755791

hokusyu:
いや別に普通の事例だったらhit-and-runさんの発言を侮辱であるととらえ、謝罪要求をするってのは分かるんですよ。

ごちゃごちゃ書いてますが、どっちが正しいかは彼でさえ理解してるわけですよw

hokusyuはおいといて、ここではhit-and-run氏の今回の発言をまとめておきましょう。
前回の記事のブコメと、はてなハイクの発言と、そこへ僕が付けたブクマコメントです。

(今回の本題、「あの程度」というのなら具体的にどの作品のどの程度のものを言っているのかちゃんと批評しろ、という要求について)


http://h.hatena.ne.jp/hit-and-run/9258654684348342027とそこへのブクマ

hit-and-run:
で、本論に関していうと。
芸術でもないものを芸術として論評せよ、と強要するのは一種の拷問だな。
ってくらい。
ウンコを皿に乗せて持ってきて、「料理の腕を云々するのは一口食ってからにしろ」みたいな。

NaokiTakahashi:
別に芸術批評をしろとは言ってない。社会学でも政治でも道徳でも宗教でも処女崇拝でも、基準はなんでもいい。「批評をしろ」と言ってる。「あの程度」とはどれのどの程度か、テメエの発言に責任を持てと言ってる。

hokusyu:
もし彼の発言が名誉毀損にあたるならさっさと訴えればいい話で、そうでないならば「責任を持て」みたいな「紐」をつけるのは「表現の自由」の侵害ってのがあんたのスタンスじゃなかったの!?

NaokiTakahashi:
だからー、これ具体個人の名誉権の問題でしょうが。表現の自由に紐がついてようがついてまいが、それ以前に問題でしょ/読まずに罵倒ははてな村の得意技なのかもな。

hit-and-run:
それは裁判所が判断することだよ、あんたじゃない。

NaokiTakahashi:
ああ、前に言ってた「仮にそうなったとしても、そこに公権力が介入することは否定してないだろ。アホか」ですね? 同じレス返しとく。「それ、レイパーの論理だよ。ヤクザまがい」

hit-and-run:
ちょっと冷静になったら?俺はあんたが主催する人民裁判には従わない。俺があんたの名誉を毀損したかどうかは裁判所に判断してもらう。あんたがそれを望まないなら、それこそやり得のヤクザの論理だろ。

NaokiTakahashi:
つまり、訴えられて負けて具体的に人権侵害が立証されるまで一切問題はない、だから謝らないし責任もとらない、ということでよろしいですか?

hit-and-run:
それがブログ中断するまでのあんたの立場だったはずだ。正面からは応えてもらえなかったけどね。私には別の考えもまだある。

NaokiTakahashi:
人権侵害は訴えられなくたって人権侵害だろ。例の動画の件も訴えられるまではOKか? 俺がそんなひどいこと言ってたというソースをあげろ/で、俺は君の考えを聞いてるのだが?

ここまででブクマタワーひとつ終わり。

さて、一カ所hokusyuくんが入ってるんだけど、関係してるので手短に反論しておく。
誰がどこでそんなスタンスを取ったというのか。
例えば件の写真集に関したって、たとえ被写体の女性達が何かの理由で訴えられなくてもあれは侮辱やら名誉毀損やら肖像権侵害やらであって、それが批判を浴びてしかるべきものであることは、それ以上の倫理的な議論などするまでもなく明白だ。だって人権侵害だぞ?
そんなことは作った連中でさえ言っていて、ほとんど異論がない。外野がしゃしゃり出て何やら議論する余地がほぼない、当たり前の結論だ。
実際にこの件が訴えられるかどうかは分からないが、大学側がこのような行為に及んだ学生に何らかの処分を下すのはまるでおかしなことではない。

で、hit-and-run氏の議論だが、最後の発言以外は全部、先ほどの風評被害の議論を綺麗になぞっている事がこうしてみると一目瞭然だ。なるほど一貫しているが、最後の発言で、それがなぜかこの僕の意見だと言うことにされてしまっている。どこで僕がそんなことを言ったというのかソースを求めたのだが、返答は無し。

しかし「侮辱であるととらえ、謝罪要求をするってのは分かる」とおっしゃるhokusyu氏は、ウンコだのなんだのとどんどん傷を広げているhit-and-run氏をどう思ってるのだろう?
加勢に入るほどお友達なんだったら、傷が浅いうちに止めてあげればいいのにな、と思う。


(何か本題以外で議論している件について)

http://h.hatena.ne.jp/hit-and-run/9259270410753622428とそこからのブクマ
本題と関係ない議論をするつもりはないのでブクマは本題に絞り込んだ。よって、本文とはほぼ関係なし。
僕と関係ない話題は切り落としてあります。


NaokiTakahashi:
要求はひとつだけだが。「あの程度」とはどれがどの程度だか後付けでいいから批評して釈明しろと言ってんの。出来ないなら、俺の仕事を根拠無く侮辱したことについて謝罪しろ。俺が求めてるのはそれだけだ

Cunliffe:
「釈明・謝罪を求める」=「表現に対して責任を負えと迫る」ということだから、普段垂れてるご高説と矛盾してるよね、へーんなの(笑)。hit-and-run氏の挙げているそのほかの論点については抗弁しないのね(笑)

NaokiTakahashi:
はあ? 作品でも作品批評でもない、俺という具体個人を公然と侮辱する発言について釈明を求めてるんだが? 俺にも名誉権がある。俺は侮辱や名誉毀損が裁かれなくていいなどと言ったことは一度もないぞ。


NaokiTakahashi:
謝って済むならそのほうがいいだろうよ。直接具体的な被害者である俺がそれでいいっていってんだから

hit-and-run:
お前は裁判官か?それともダーティーハリーか?

NaokiTakahashi:
離婚裁判になる前に仲裁に入るのはダーティーハリーか?w

hit-and-run:
あんたはそういう仲裁を否定して「ダーティーハリーの自警主義」ってレッテル貼ったんだろうが。ご都合主義すぎる!

NaokiTakahashi:
「出版社に押しかけて」「結果として黙らされたり、職を失わされる(もちろん、法的拘束力抜きで。念のため)人が出てくるかも知れませんが、それ自体が目的ではありません」を批判したんだが?手段の問題

hit-and-run:
だから、その手段に違法性がないなら人権侵害でも何でもないだろ。「脅迫や強要に当たらない場合」と念を押したはずだ。

NaokiTakahash:
「押しかける」「結果どうなろうが知るものか」ってのは建造物への侵入とか脅迫とかになりそうだけど。一方で、俺の行動にどんな問題が?/むしろ逆の念押ししてるだろ、目的と違う結果に責任とらない、と

ここまで。さらにこのダーティーハリーの話と関連してハイクから。
http://h.hatena.ne.jp/hit-and-run/9259270422334218303とそこからのブクマ

hit-and-run:
>>>>>
id:NaokiTakahashi ↑離婚裁判になる前に仲裁に入るのはダーティーハリーか?w
<<<<<
 
これもどうなんよ。
市民の自治なんて信用できないって言ったのは誰だよ?

NaokiTakahashi:
個人間で交渉すれば済む話に国家を介入させる必要ないでしょ。市民的自治とは無関係じゃね?公共圏とか登場しない、俺と君との話なんだから。

ここまで。

ダーティハリーが近所の痴話げんかしてる夫妻を「離婚なんて馬鹿なことはよせ」と説得仲裁したところで、それはアウトローでもなんでもないのである。ただのちょっと気のいい近所のおじさんである。最近のイーストウッドならそういう役もありだと思うのである。
話し合いで解決出来るものは話し合いで解決した方がいいというのは、別に自警主義ではないだろう。
近所の離婚を仲裁するのはよくても、悪党を裁判なしに撃ち殺してはいけないのだ。俺は自警主義を否定する。
彼はhttp://d.hatena.ne.jp/NaokiTakahashi/20091218/p2#cの議論の際に、二度指摘したにもかかわらず「押しかける」という表現をとうとう取り下げなかったし、「目的ではない」ことが「結果」を正当化できるという狂った論理も、取り下げてはいない。そういう男が風評被害を先述のようにユルユルに論じているのであり、そして今回のようなことをやっているのであり、売り言葉に買い言葉というだけではなく、彼は実際にそういう態度で自己正当化をはかる人なんだなあというのが率直な感想だ。

(芸術の評価について)


http://h.hatena.ne.jp/hit-and-run/9234078411410885310とそこからのブクマ
id:hit-and-run:
批評なり論評なりを書いて差し上げてもけっこうだが、今回の場合、私は高橋さんのシナリオの程度が低いから規制しろ、発禁しろと言ってるわけじゃないのでね。
一般通念に照らして、高橋さんのシナリオが論評に値しないものであるということが示せれば十分で、内容にまで踏み込む必要はない。
そして、一般通念にしたがって高橋氏のエロゲシナリオを程度の低いものと扱って問題があるとは思わない。
私が高橋氏の芸術観に従わなければならないいわれはない。

NaokiTakahashi:
「社会的に構造化された差別」が生むところの一般通念に対して完全に無批判だな。大野さんもこれとは一緒にされたくないだろ。あとそれだと「あの程度」の具体的に参照する先の「程度」が分からない。

ここまで。問題は次の3点。

とりあえず、こんなものかな。このへんで反論が止まり、しばらく経って書かれたのがこれである。

http://h.hatena.ne.jp/hit-and-run/9234078415751915091

hit-and-run:
http://b.hatena.ne.jp/NaokiTakahashi/20100623
これだけご都合主義はなかなかお目にかかれない。
本人は、主観的には一貫した意見だと思っているのであろうが……

どうやら、内容のある反論が出来なくなったらしい。
というわけで、今回のhit-and-run氏についてはひとまずこの辺で。